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カラフルハロウィンパニック!~ゲストも居るよ~

よくやられることに定評のある彗嵐さんとこの美影さんと猫乃ちゃんを使って1本書き上げてみました。
ハロウィンネタ、異形化マシマシでどうぞ。

あとイラストもいくつか書いてもらったので挿絵に使ってます。
順次更新します。
いつもの学校、いつもの教室……のはずなんだけど、何かおかしい。
外の色はぐちゃぐちゃに混ぜたような奇妙な色。教室にはかぼちゃの飾りやランタンが置かれてる。
「六宮さん、この問題わかる?」
先生はかぼちゃの頭をかぶっているし、きらりはつぎはぎゾンビ…学校違うはずなのになぜいるし。
やっぱり何かがおかしい。ここは夢?にしては学校っぽくはある
「六宮さん、考えことはいけませんねぇ」
カボチャ頭がそう告げると、いきなり舌を伸ばし、私の顔を舐めてくる。
「でも、よく考えよく溜め込むあなたは最高です。そう、最高の――です」
何を言ってるのかわからない、気持ち悪い。それにムズムズする。

『鏡が欲しい』そう思った途端、目の前に鏡が現れる。

くろねこスプーキー1

「……なにこれ」
写ったのは、耳が生えかけている奇妙な私の姿。舐められた場所からまるで、広がるように姿が変わり、腕が、身体が――。
「よく考えなさい、そして考えるのを止めるのです。身を任せ、そして高らかに、トリック・オア・トリート!」

トリック・オア・トリート! トリック・オア・トリート…… トリック・オア…… トリック……

そのまま『トリック・オア・トリート』の声は何度も響きながら、目の前がゆがんで……。
「――!? ゆ、め?」
私は夢の世界から現実に頭を切り替えた。周りはまだ暗い、そういえばご飯を食べて、そのまま寝てしまっていたようだ。

「それにしても変な夢。手足はぐにゃぐにゃだし、いつっ」
伸ばした腕は天井にぶつかり、音を立てた。
「身体は猫っぽくなるし腕は、うで……」
腕の位置が定まらない。まるで何倍にも長くなったように要領を得ず、ベッドのあちこちを掴んでようやく髪をつかむ。なぜか頭についた変なもの――耳も動く。

「……ま、ま、まさか!?」
私、六宮・翠はベッドから文字通り飛び起きる。跳ねた身体は勢いのままに天井にぶつかりそうになり、そのまま激突――しなかった。まるで本能で行動するかのように両手と両足をバネにしてしがみつき、そのまま空中で1回転し、机においてあった鏡を覗く。

言葉を失った。手足は身長と同じぐらいにまで伸び、服はボロボロ。破れた場所からは猫の毛が飛び出している。
「これって、夢と同じ」
そう、夢と同じ。それどころかもっとひどくなっている。突如『ポン』と音が響けば手が巨大な猫の手になり、ますます奇妙な猫獣人になっていく。

「どうしよう、このままじゃ外にもでられないし、これもイロクイのしわざ?でもそれなら……」
慣れない手で机においてあったスマートフォンを操作しようとするも、肉球が邪魔してスライドすらままならない。もう片方の手も猫の手になれば握ることすらできず、手からこぼれ落ちる。

「このままだと外にはまずでられないし……今日って確か」
カレンダーを見ると10月30日。ハロウィンまであと1日。確かきらりは仮装パーティーがやりたいって張り切っていたはず。しかしこの姿ではきらりに見せようにも見せられない。
「ううぅむ、トリック、トリック……」
トリック・オア・トリート。そうつぶやこうとして思わず口を塞ぐ。
「まさか、夢のなかに居るイロクイ?」
もしそれが本当なら、どう倒せばいいのか。それ以上に皆にどう言えばいいか。親に見つかれば卒倒だし、おまわりさんに見つかればどうなるか……。

「(よく考えなさい、そして考えるのを止めるのです )」
「う、うぅぅぅ! 聞こえない、聞こえないってば」
人間の耳をふさぐと、そのまま耳が消えて猫の耳だけになる。カボチャ頭の説得が響き、身体のあちこちが歪むように変化していく、顔が、目も次第に金で、縦に割れた猫の目に。顔はさらに毛深くなり、牙とひげまで生えてきている。

「……」
思わずいーっと口を広げてみる。牙が生えそろって人間味がまた少し失われている気がする。こうしてみると、テレビで見る特殊メイクのようだ。
「なんだかこういうのも、あり?」立ち上がると、天井に頭をぶつけそうになるも、急に背が縮む。そして縮んだ脚の皮がそのまま包み、衣装に変わる。

くろねこスプーキー2

片方は星、もう片方はぐるぐる巻きの包帯。腰にはかぼちゃをモチーフにしたスカート。
「もっとひどくなった」そう頭を抱えると、何かが頭を撫でる。尻尾だ。自分の尻尾が慰めるように頭を撫でている。
「そんな心配いらない、要らないってば」手で尻尾を追い払おうとすればするほど尻尾が逃げ、手が足に絡まりそうになる。

「むぅぅ。でも、なんだか慣れているようなそうでもない、ような。今の背丈なら仮装と言ってごまかせるかな?」
「(えぇ、でもまだ足りない。何が足りない)」
「何?」
カボチャ頭の声が響く。しかし妙に親近感を感じる。
「(足りない足りない。任せ方が足りない。君の姿は人間じゃぁ無いじゃないか)」
「人間じゃ……あっ」
そう、人間じゃない。ということは何をしても怒られない、バレることもない。単に『猫の怪物がやったこと』として済まされるだけじゃないか。尻尾も賛同するように先端の毛を分けて◯にする。

「(オッケー!君はくろねこスプーキー、僕らの仲間、ハロウィンの主役!)」
ハロウィンの主役、スプーキーイロクイ。いや、イロクイですらないハロウィンの使者?
「(お菓子かいたずらか、今宵のハロウィンにぎりぎり間に合うトリックスターは~?)」
「わ……わたし」
「(Good! )」

なんでこうしてやり取りしてるのか、よくわからない。よくわからないけど……まるで走っているかのように気持ちが止まらない。尻尾も耳も、身体もウズウズしている。
「(現在の時刻は23時55分。さぁ、考えもキマってきただろう。よく考えなさい、そして考えるのを止めるのです。身を任せ、そして高らかに、高らかに!高らかに??)」

「トリック・オア・トリート?」
「(トリック・オア・トリート!)」
「トリック・オア・トリート!」
当然ながらカボチャ頭は見えていない。見えてない声に応えて急に叫びだす狂気。誰かが飛んで来るかもしれないが、そんなことはすっかり翠の頭から抜けていた。
叫びとともに翠の顔にカボチャ顔のようなマークが付き、手足の先端が肥大化していく。さらに叫べば胴体が縮み、手足が、頭が極端に目立つという不可思議な体型に変わる。

これまで抑えこんできた反動を全て好転させたかのようにニャアと笑みを浮かべる翠。いや、もはや『翠だった怪物』とでも言おうか。

くろねこスプーキー3

「トリック・オア・トリート! トリック・オア・トリート! にゃしししぃ!騒ぐのは気分がイイにゃぁぁ!」
くろねこスプーキーと化した彼女は尻尾を2度3度振ってカボチャのランタンを出すと、手始めに窓から外壁をつたい、親のいる1階へと向かっていく……。

時計の針は、10月31日の0時を指していた。

「翠、近所迷惑になるでしょ! まったく、スマホ持たせたのは早かったかしらね」
髪をヘアピンで止めた身ぎれいな女性が顔を歪ませ、階段をあがる。この女性は六宮・ルリ子(るりこ)。翠の母親にして色渕ガ丘の地域役員長という肩書を持つ、いわゆる『礼節ある見本となる母親』だ。翠にスマホをもたせたのも本来連絡をつけやすくするためだったが、いつの間にか彼女が目の敵にしている筆咲校区の子どもと仲良くしているのが目下の悩みでもある。

「これだからあの校区と合併なんて……翠!騒ぐようなら……いない?」
ルリ子は首をかしげ、布団をめくるが中には誰もいない。しかし、窓は開いている。
まさか、窓から出て行ったのか。嫌な予感が頭を駆け巡る中、下の階から食器を蹴散らしたかのようなすさまじい音が鳴り響いた。
「誰、翠なの!?」

慌てて1階に駆け出すルリ子、音の出処である台所に入って目にしたものは――怪物だった。
「あ、あ、ぁ……ううん」
「トリック……あー、言う前に気絶しちゃったにゃぁ、まぁクソうざババアだしお菓子たんまりだしニャァ。隠しやがってさ、ニャッシシシ!」
テーブルに乗ったままガツガツと棚にあったお菓子をむさぼる姿は、翠というよりもはやスプーキーそのもの。尻尾を器用に操り、ランプで食器を破壊しながらお菓子を探す様は器用というか強欲を絵に描いたようだ。

「お菓子を食べると力がみなぎってくるし、イタズラの仕方も捗ってきたにゃしぃ」
ランプが残った洋菓子を袋ごと飲み込むと、くろねこスプーキーと化した翠は次のエモノを探しに街へと飛び出していった。
その姿を見ているものが居るとも知らず……。

「こりゃあかん。思ったよりこの街、スプーキーの数が多いわ」
巫女服調の上半身にスカート姿。長い紫髪を携えた少女は深刻な顔をし、黒猫の背中に札を投げつけた。
「1人でやってもらちがあかへん……とは言うけど、あの鬼のいうことも胡散臭いなぁ。まぁうちもスプーキーになりたないし、共同作戦や」

少女、鈴華・美影(すずか・みかげ)は割りきったかのように錫杖を一度地面に突き、音を鳴らした。


彼女が帆布市に訪れたのは、神社としてのつながりがある紫亜からの要請だった。紫亜――さらに言えば紫亜に忠告を与えた色鬼『零無(れいむ)』によれば、イロクイと呼ばれるこの市周辺に現れるクリチャーとは異なる怪物が現れ、神隠しを行うようになったそうな。

紫亜を含むこの街の子供はイロクイに対抗する力は持っているが、その他のクリチャーに使った場合にどのようなことになるかまでは把握しきれていない。
「万が一、色をぶつけて凶悪な化生になったりでもしたらそれこそ一大事。故に主の出番というわけだ」
「確かにうちはまぁ、化け物退治には長けてるけどそこまで信頼置かれてもなぁ」
「評判もある。幾度も化生の身に落ち、魂すら堕落しながらも――」
「はいストップストップ! 事情はわかったから詳しく聞かせてな?」
「(姉様気にしてたんだ……)」
隣で猫の耳と尻尾を動かしつつ、様子を見ていたのは鈴華・猫乃(すずか・ねこの)。血のつながりはないが美影の妹であり、狂愛ともいえる熱を秘めているとか。しかし見る限りはおとなしく、執着するそぶりを感じさせないおとなしそうな子のように紫亜は見えた。

「――というわけでして、変化した後すぐに消えてしまうのです」
「スプーキーやな。10月に現れて仲間を増やし、ハロウィンの日に大暴れしてゲートを作るんや」
「ゲート?」
「この世界とスプーキーの世界をつなぐ門のことです。門が開いて飲み込まれた街は、全てなかったものとして人々の記憶から消されてしまい……」
「来年のハロウィンにはスプーキーの街として地上に出てくるんや。力は弱いけど数集められるとちょっち面倒な相手やね」
紫亜の用意した地図を見て再度うなる。神かくしのあった場所は既にいくらも存在し、発生地点であることを示すシールは30を上回ろうとしている。

「それでどうしましょう。ハロウィンの前に倒し、元に戻せるのであれば助かるのですけど」
「手っ取り早い方法は1つ。スプーキーを捕まえて菓子を食わせずにしておき、元に戻させるんや」
スプーキーはお菓子(トリート)を食べることで自身の力を確立させ、魂まで己のものにしようとする。完全に染まりきったスプーキーは当然元には戻れない。一方でいたずら(トリック)をやっても力は弱くなるが、ゲートの開放が進んでしまう。言う分には簡単な作戦だ。
「だとしたら見つければいいだけの話。幸い感づくものに違いがあるゆえに、目印を付けてもらいたい」
「クリチャー同士の何とやらやね。頼みにさせてもらうわ」

目も含めて真っ白な全身に角の生えた少女――零無はうなづく。彼女としてもスプーキーによって街を飲み込まれてしまうことは、縄張りの横取りに等しい。一時は街を支配しようとしていた色鬼を退けたばかりなだけに、(理由はよこしまだけど)目は真剣だ。
「紫亜も就かせる。せいぜいこきつかうといい」
「なめられっぱなしやなぁ、よろしくな布津之さん」
「紫亜で結構ですよ。私も退魔に優れた方と組むのは光栄ですのでお気になさらないでください」

こうして零無総司令のもと、現れたスプーキーに目印をつける作業が始まった。
大抵は貼り付けると同時に退散していったが、何匹かは先に人間をスプーキーに変えて逃げ去るという頭の回るスプーキーも居た。それでも成果は着々と上げ、そして――。
「0時過ぎたな。仲間増やしはこいつでしまいや」
美影が時計を確認する。0時7分、イタズラは今日の夜から始まるのだ。


「で、なんで私らまで変装しなきゃならないわけよ!」
「お化けにはお化けなのーね。見つからなくてもお菓子はゲットできるし良いじゃないのね」
夕方、彼女たちは紫亜の家である布津之神社に集まり、夜に向けて準備を勧めていた。
リボンをコウモリリボンに変え、血化粧と牙を生やした少女、城奈は相方である黒ゴス吸血鬼である真畔に茶々を入れる。作戦も気になるが、お菓子も気になるお年ごろというわけだ。
「そうは言っても……ちょっと恥ずかしい」
真畔も城奈達と同年代だが、少しませている分ハロウィンのような行事にはいまいち関心が向かないようだ。そもそもこの衣装は紫亜のお古とあって、機の乗らなさも少しあった。

「にしても、きらりちゃん凹んでるのーね」
「まさか翠も神かくしに合うとはね。無事だといいけど」
「うぅぅ、すーちゃぁん」
隅のほうで白いシーツがモゾモゾとうごめく。きらりはどうやらお化けの役回りのようだが、もぞもぞしているのは無二の友人である翠が行方不明になっているからというのが大きい。

「藍達は別口で探してみたいだし、そろそろ行こうか」
「今日はいろんな人にお菓子をもらうのね! きらりちゃんもぐずらないのね」
「うー、分かった。お菓子と一緒にすーちゃんらも助け出さないと」
きらりはシーツを被ったままゴソゴソとするばかりだった。


こうして、ゴーストと魔法少女たちの大捕り物が始まった。
「スプーキーにはこんな札が頭と背中にひっついてる。見つけたらこれを押して捕まえるんや」
「何を言われても離しちゃダメですよ。スプーキーは人の心を惑わして仲間にするのですから」
美影はゴーストを捕獲するためのアイテムをいくつか色使いたちに渡し、ハロウィンパレードの列に参加する。そのままでも十分仮装っぽい2人だが、猫乃は黒いナース服とノリノリな様子。

帆布中央アーケードで行われるパレードは数多くの人があつまり、案の定スプーキーである札付きもかなりいる。『トリック・オア・トリート』の掛け声とともに美影を始め、皆がそれぞれ動き出し、スプーキーを捕らえ始めた。

「ひー! お菓子をよこせ!さもなくばイタズラだ!」
早速捕まり、球状をした小型の檻の中に捕らえられた鼻高人形をモチーフとしたスプーキーの少年は、中でジタバタともがいていた。
「お菓子もイタズラもなしや、しばらくおとなしくしぃ」
「ヘン!胸ペッタンコなだけにけちん坊だな!」
「こ、こいつ言わせておけば……」
「姉様、挑発に乗っちゃダメですよ!」

「おがじか、いたづらかぁ!」
「俺がいたずらしてやるぜ! こっち来な!」
包帯でぐるぐる巻きになった健児は熊のスプーキーを挑発し、パレードから抜け出す。見た目の巨大さに反し、腕や足は非常に長く、末端が肥大化している。スタンプを受けたらひとたまりもない。
「こっちこっ、うわっ!」
解けた包帯に足を取られ、健児が点灯する。
「あー! いたずらー!!」
スプーキーの肥大した足が襲いかかる。このままつぶされ、ぺしゃんこになってしまうのか! ……だが、実際はそうはいかなかった。
「ギリギリセーフ、です」
「おかしぃー!! 」
狼耳と尻尾を生やした少年、サンは捕獲具を手にホッと一息つく。よく見るとスプーキーもまた女性型だが、ずいぶん欲望に沿って動いている当たりかなり浸食が進んでいた。だが、お菓子を与えなければいずれ元に戻るだろう。
「本当にビビったぜ……」

「君はいたずらしたくなる、でも……お菓子がほしい。君という名の甘い菓子を」
「いや、俺の獲物だ。こんなチャラなやつには渡せねぇ、食ってやろうか」
「わ、私そういうのはちょっと!」
2人の男性――もとい男性型スプーキーに挟まれる形で詰め寄られる藍。もちろん「はい」と言ってしまえばお化けの仲間入りとなってしまう
「フフ、かわいい魔女さんだ。ボクのハーレムに迎えてあげ」
「しゃらくせぇ、ここで俺のメスに……なんだ、消え」
スプーキーの後頭部に捕獲具を笑顔で叩きつける紫亜と真畔。もちろんスプーキーは中に閉じ込められ、騒ぎ始める。
「藍は離れないほうが良さそうやね」
「スプーキー以外の悪い虫が居ないとも限らないからね、まったく!」
藍はこの様に反論できず、ただ『あうぅ……』とつぶやくしかなかった。

こうしてスプーキーを次々に捉えては放置を繰り返す。お菓子を得られなくなったスプーキーはすぐ人間の体を手放すものもいれば、しつこく迫るものも居るなどさまざま。それでも確認できたほとんどのスプーキーを捕まえることが出来た

「トリック・オア・トリートー……はぁ、すーちゃんどこいったんだろう」
かごの中にお菓子をいっぱいもらいつつ、ふらふら歩き回るきらり。ゴーストの仮装仲間を見つけ、一緒に回ることでお菓子を確保していたが肝心のスプーキーが見つからない。……もしかすると、居たけど見逃してたかもしれない。
そんなことを考えながら列から少し離れた所で悲鳴が聞こえた。

「にゃししぃ、お菓子もイタズラも両方やってのスプーキーさぁ!」
パン屋から飛び出したのは奇抜な服をまとった猫獣人。スプーキーのようだが、その面影に見覚えがある。
「あの後ろ姿、もしかしてすーちゃん!?」
シーツに開けたメッシュの目越しだが、確かに見慣れた友人っぽくはあった。その直感を頼りにきらりはスプーキーの後を追いかけた。

「鈴華の両人に色使い。白の色使いが猫のスプーキーに引っ張られたぞ」
「きらりちゃんの近くにいる人は!?」
「サン君だったはず、だけど今健児君と一緒らしいし」
「あぁもうバラバラなのーね!」
「わちゃくちゃ言ってる場合やない! 零無、場所教えてな」
『言われずとも』と伝えるやいなや、携帯に向かったであろう場所が送信される。帆布市の路地裏にある災害物資用の倉庫だ。
「ここからなら十分間に合うわ、これ以上犠牲者を出させないわ!」
真畔が意気を込めて一番に走りだし、それを追う形で他の面々もついていった。


そして、目的地。既に周囲には人の気配もなく、遠くからパレードのにぎわう音だけが聞こえていた。
「にゃししぃ、これだけのお菓子があればさらにパワーアップできて、倉庫をどっかーんすればゲートだって開くにゃし」
「そんなの、ダメだよ!」
「にゃし?」
くろねこスプーキーが振り返ると、そこには白スーツを被った何かが抗議の声をあげていた。特に見覚えがあるような、ないような……もう関係ないかもしれないが、どこかで何かが引っかかる。
「人間にゃし? ならこのたくさんのお菓子を分け合いっこするにゃ」
スプーキーはランプの口からお菓子を両手からあふれるぐらいに吐き出し、きらりに差し出す。
「お前もいっぱい持ってるにゃし、ちょっといただくにゃ」
「~~~っ!」
きらりは顔を膨らませ、怒りに震えながら手を払い、スプーキーの手の中にあるお菓子を散らした。
「にゃにゃ!? あ、でもこれってイタズラ大成功?」
「大失敗だよお……戻ってよすーちゃん。この姿もいいけど、やっぱりいつものが良いよぉ」

シーツをはぎ、顔を見せるきらり。ずいぶん前から泣きはらしていたせいか、目の周りは真っ赤になっていて、それを隠すためにシーツをかぶっていたのだろう。
「せいこう、しっぱい、ううう?どっち?どっち??」
「しっかりしたまえトリックスター! もうこの場所を見つけただけで君はMVPさ」
「な、なに!? 声が聞こえた!?」
カボチャ頭の声はまるで発破をかけるように倉庫内に響き渡る。くろねこスプーキーだけではなく、きらりにもその声が聞こえたのは、そこまでスプーキーの影響力が強まっている証拠だろう。

「これだけのお菓子に数々のイタズラ。スプーキーのあらかたは元に戻ってしまったけど十分に集まったよ。あとひと押し、もうひと押しのイタズラでゲートオープン!ゴーストタウンの開幕!」
「ゴーストタウン!?」
2人の声が重なる。恐怖と、そして歓喜というベクトルの違う声が重なった。
「この街はスプーキーにしかわからない、ハロウィンだけ現れる街になる。ここから世界がひっくり返る。なんてス・テ・キ!でもぉ……人間、君が邪魔だ」

パン、パンと手をたたくと、くろねこスプーキーの尻尾が自分の顔をたたく。そしてぐるぐるとした瞳のままふらふらときらりの身体をつかんだ。
「はなして!目を覚まして!」
「離しませーん、目も覚ましませーん。お前にはちょっと苦しいやり方でスプーキーに一直線になってもらうよ」
そのままくろねこスプーキーの尻尾が手の形になり、ランプからお菓子を取り出し、口を開かせる。
「むぐぐ、うぐーっ!?」
「お菓子はスプーキーの力の源!トリック・アンド・トリート! そんなパワーたっぷり特製トリートを人間に詰め込むとだねぇ?」
きらりの身体が見る間に縮んでいき、胃に落とし込まれたお菓子は膨れるようにたまっていく。短くなった足は短く、先は細く。胴体はお菓子を詰められるごとに洋なしのようにデフォルメナス型に変わっていく

「こんな風にどんどんスプーキーになってくのさ! さぁ仕上げと行こうか!」
「ふががっ、あー!?」
くろねこスプーキーの両手がきらりの口をさらに開かせ、伸ばしていく。本来なら起こりえるはずのない広がり方を起こし、ランプの口が大きく開き――大量のお菓子を流し込まれる!
「あっははぁ! これで邪魔する奴は……あいてぇっ!」
頭に矢が刺さり、矢カボチャとなった頭を抱えるカボチャ頭。彼がよく目を凝らすと、倉庫の隙間から屋をつがえる猫耳の女がいるではないか!

「そこまでやスプーキー!」
「よくもハロウィンを滅茶苦茶にしてくれたな!」
「覚悟なさい、その腐った根性を叩き割ってあげる!」
「2人とも返すのーね!」
美影に続けと入ってくる健児、真畔、城奈をはじめとした色使いの面々。だが、カボチャ頭は自分の頭を取り外し、ひるむことなくゆうゆうと構えている。
「2人を返すねぇ、良いけど2人共スプーキーになっちゃってねぇ。特についてきちゃった子、お菓子たっぷりだから、ほら!」

「あ、あうぅ、うぅぅぅ!!?」
手がカボチャ状になり、肌も橙色のカボチャ色。首は蔓のように細くなり、頭から生える二本の葉っぱはうさぎのようであり、コミカルな姿は街で見たスプーキーの姿そのままだった。
そして顔と身体にジャック・オ・ランタンの顔が大きく浮かび、額に兎のマークが浮かび上がると――キラリの目が怪しく光った。

「もうこれで彼女は立派なスプーキー! トリックスターとは比にならないパーフェクトスプーキーさ、さぁその力を見たいなぁ、見せてくれー!!」
「きらりちゃん、しっかり!」
紫亜が声をかけるも、きらりはのっしのっしと歩を進め、翠はお菓子切れに陥ったのかふらふらと倒れる。威圧するかのような歩行は絶望をいっそう引き立たせ、きらりだったカボチャうさぎスプーキーはそのまま両手を振り上げ――前に倒れこんだ。

「へ?」
「えっ」
一同が状況を読めない中、ただ一度『グウウゥゥゥッ!』と、地の底から鳴り響くような音が彼女から鳴った。
「おなかが空いて力でないー、あたしもう動けないもーん」
「そんな、私の指示にしたがって動いてくれないのん?」
「やだ、お菓子無理やり詰め込んだし」
「お、おぉぅ……」

ゴロンと転がるきらりだったスプーキーとカボチャ頭のやり取りにア然としつつ、皆がそれをただ見つめていた。そして、藍が話の切り口を見いだす。
「な、何が起こってるの?」
「わからないです、けど……」
「チャンスってことだけは確かやな!」

そうと決まれば動きは早かった。各々が一斉に動き出し、攻撃に回ることができる面々は攻撃を。特にないものはきらりと翠の救出に走った。

「もういいもういい!それに人間が集まった所で……オラーッ!!」
カボチャ頭の口が、目が光、橙色のオーラが、煙が倉庫内を包み込む!
「そんなことやったって何を……な、なんやこれぇ!?」
真っ先に突撃した美影は異変に気づく。足の感覚が多すぎるし、身体が妙にゴツゴツしている。その姿はまるで錫杖を持ったムカデスプーキーだ。

「うげぇ、身体が、身体がなんだか乾いてる気がする。血かお菓子、お菓子ー!」
「ちょっと健児、あんたまさか本気で言ってるの!?」
健児は長い手足をくねらせ、包帯をまき散らしながら転がるマミースプーキーに。真畔は持っているものが竹刀ではなくライフル銃に代わり、カモ柄の服をまとう兵隊スプーキーに変わっていた。
「……なにかおかしいわ。さっきまで持ってたのこれじゃないし」

きらりと翠はまったく動くことが出来ず、ゴロンと転がっていた。翠は自分のお菓子を与えすぎたのだろう。姿はそのままだが、戻る気配がなく目を回している
そんな2人をかばうように円陣を組んだ3人にも変化が訪れていた。

「もう少しで助けられそうなのに、私たちまでスプーキーになっちゃうなんて」
「でも変です、変わったというよりまるで……」
「イロクイの塗替えみたいなのね」
マズルの伸びた狐のスプーキーとなった藍が嘆くのに対し、デュラハンとなって首が外れて本と頭を持つサンと文字通り幽霊になった城奈は冷静だった。
「え? だってこんな姿じゃ……」
「だって私、浮いてるのに足ついてる感覚があるのね。これじゃお化けじゃないのーね」
「そんなわけないぞ? このオーラと煙は人間をスプーキーに変えるとっておきさ。さぁ仲間になって街を楽園にしよう、ね、ね?」
カボチャ頭の頭が汗をかけたのであれば、恐らく冷や汗を流していただろう。明らかに動揺が見られていた。

「おねえさま、これやっぱり変ですよ!なんかちぐはぐします!」
「これって、幻覚の一種じゃないかしら?」
ぴょんぴょん飛んで進む猫乃はカカシのスプーキーになっているが、妙に跳びはねる感覚が早く、寸胴そうなタヌキスプーキーになった紫亜も身体に見合わぬ速さで美影に声をかける。

「なるほどなぁ、猫乃、一発打って!」
「はい! これでも大丈夫なはずです!」
猫乃が身体を固定させて弓を引き絞り、放つ。が、カボチャ頭は身を翻して避ける。
「こっちが本命や!」
美影はそのまま攻撃をつづけ、ムカデとなった身体を思いきって振り、憎いアイツの頭に叩きつける!
「いたーい!?」
カボチャ頭が美影のハイキックを受けて凹む。その痕は――美影の履物そのまま。ムカデの胴体ではない!
「そういうことなら、こうよ!」
真畔が続けとばかりにライフル――否、竹刀でカボチャ頭の腹を叩く!
「腹パンは愛をもってぇ!」
「てめぇよくもだましてくれたな!マジで喉カラカラだった気がするぞ!」
健児は包帯だらけの足でひるんだカボチャ頭のすねをけたぐる。
「く、くそう。お前みたいな単純な人間ならそのまま自分をスプーキーだと信じこみ、魂まで染まってく私の秘奥義がぁ。せっかく集めた、トリックなエネルギーがぁ!」

蹴られ、打たれる度に光のようなものが散っていき、押されていく。そしてついに観念したかカボチャ頭はそのエネルギーを地面に叩きつけ、小さなゲートを開いた。
「バーカバーカ! 私は死なない! ハロウィンがあるかぎり何度だってチャンスを狙うのさ!」
「もう来るな!」
「あーっ!? また来年!」
カボチャ頭は錫杖で突かれたことでゲートに自分の頭を落とし、身体も追いかけるように穴に飛び込んだ。


「これでよし、色ってのは使っても大丈夫かどうか分からへんけど……まぁ元に戻るやろ」
美影が応急処置を施し、きらりが心配そうに見守る。全員の姿はカボチャ頭が消えたことで元に戻り、きらりはあの後、自然に元に戻った。零無いわく『白の力が作用したのかもしれない』というが、確かではない。少なくとも危機的状況は免れたのだ。そして、くろねこスプーキーとして長かった翠はなかなか起きてこない。
「心配です、シロナ」
「大丈夫なのね。翠ちゃんは疲れて眠ってるだけのね」
各々が心配そうに見ている中、きらりだけがつきっきりで翠を見ていた。
「……すーちゃんのもふもふした体もわるくないよ? でも、やっぱりいつものすーちゃんに戻ってほしいな」
くろねこスプーキーとなった翠の肉球をさすりながら見守るきらり達。一向に目が冷めず、時間だけが過ぎていくようにも感じた。
しかし、それも終りを迎える。ゆっくりとではあるが、翠が目を開いた。

「あたし、何してたっけ?」
「……すーちゃん!」
「きらり、ちょっと、苦しい」
「もふもふ!もふもふさせるぐらいいいじゃん!心配したんだからもう!」
「もふもふ……うわぁ」
毛むくじゃらな身体、スプーキーのままの身体に困惑しながらも翠はきらりが満足するまで構い続けた。


翠の体も元に戻り、時刻は気づけば午前0時を迎えようとしていた。門限の時間はとっくに過ぎている上に、家の前には警察官も居る。とても行きにくい。
「どうしよう」
「大丈夫なのね、あの警察官はじきにいなくなるから、そしたら行けばいいのね」
「城奈、一緒じゃダメ?」
「ノーなのね。私が出て行くと翠のお母さんがものすごく恐縮しちゃうの」
「……」
「あえて言ったのね。でも今回は翠の悪さもあるし、1人で行くの」
『わかった』とだけ良い、遠くから見守る城奈。薄らではあるが翠の母親について知ってるからこそ、自分が見送りを引き受けた。多分この方法が一番波風を立てなくて済むと信じて。

「翠! よそ様にも心配かけさせてもう!」
「……ごめんなさい」
震える母親に翠は憮然とした顔で一言だけ謝る。だけどどこか煮え切らず、手を引かれて家の中に入るも、今はただ自分の部屋に戻って寝たかった。


時刻は11月1日、午前0時ちょうどを迎えようとしていた。
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