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欲深き蒐集者

青松さんところの子を使ってアレコレされてもらいました。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=50215966
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=50216438

 スコル・ピクスと呼ばれる機体がある。外見はまさしく機械のサソリ、しかし人工知能にしては機動性が高く、端直ではない思考ルーチンは賞金稼ぎの間でももっぱらの噂となっていた。

 中にはスコル・ピクスそのものに賞金をかける者もいたが、ことごとくサソリのハサミと針によって余計な出費を強いられることとなった。

 それもそのはずだ、なにせこの機体は――。

「今日の仕事おしまいっと。そろそろ解除してくれない?」
『オッケー。お疲れ様、紫水』
 コントロールルームともジェネレーターとも呼べるケーブルだらけの部屋。部屋の中央にはケーブルが密集し、中心には銀色の少女が融合するかのように取りこまれていた。
 彼女の声にナノマシン『Type-Mt』が応え、一体化していたケーブルがほどける。銀色の肌も徐々に人間らしい肌へと戻っていく。彼女はナノマシンと一体となり、生体CPUと化して戦っていたのだ。

 彼女は紫水・群華(しすい・ぐんか)。スコル・ピクスのパイロットだ。
 パイロットではあるものの、彼女が操縦桿を握ることはない。文字通りスコル・ピクスと一帯となって戦う。それを可能にするのがナノマシン技術である。
 ナノマシンは人体と融合し、柔軟な思考を持つ論理回路――いわゆる生体CPUとして転用することができる。操縦から火器管制、周囲予測までの全てをこなす様は、マシンが自らの手足になったと謳われるほどだ。

 もちろんナノマシン技術は悪用されたときのリスクも大きい。人類を滅ぼすことすら可能な禁忌の技術は広まることなく、いつしか歴史の闇に葬られた――この機体も恐らく、葬り去られながらも蘇った1体なのだろう。

 ケーブルを払った紫水は基地に戻ると、備え付けのハッチから換えの服に着替え、マシンから降りる。
 その容姿やいかにも年相応の少女。だが、今日は妙に表情がさえない。まるで警戒するかのように周囲を見回す。
「おかしい、いつも使っているハッチなんだけどな」
 普段なら声の一つでもかけてくれる整備士は無言。動作も硬い。明らかにおかしい。

「誰かいるんでしょ、顔ぐらい見せたら?」
『そうさせてもらおうかしら』
 声に辺りを見回すよりも早く、近くにいた整備士が紫水に飛びかかる。
「おっと」
 慌てて身をかわすと整備士は転倒。帽子が外れると、そこにはブリキのようなマシンフェイスが姿を見せた。

「機械兵なんてけしかけて…でてきなさい!」
『そういきがっちゃって。今は自分の心配を……するまでもないわね』
 戦闘データは十分。そして――10人は居よう機械整備兵。
 何より紫水が動くパターンも読めている。室内に通じる入室口は閉鎖。スコル・ピクスに戻るのであれば…
「敵が多いわね、何とか切り抜けないと」
 前後を絶たれ、活路を考える紫水。しかし、徐々に思考が、意識が薄れ始める。
「なん、とか……」
 目がかすみ、まどろむように機械の臭いが漂う格納庫の床に身を伏せた紫水は、そのまま意識が黒く染まった。

 機械兵は口を開けたまま佇む中、紫水の様子を見るべくガスマスクの女が機械を向ける。
 
「バイタルは問題なし、意識レベルのみ落ちてる、と。運び出しなさい」
 一言号令をかけると、機械兵は無言のまま紫水を担ぎ上げ、数体はガスを吸引して周囲の証拠を消していく。
「ちょっと強引だったけど計画通り。このぐらいする価値があるわ」

 スコル・ピクスを置き去りに、紫水だけが連れて行く……これも彼女が策略。
 誘拐犯の端末には、座標偽装チャフのカウントがが0を示していた


「ん…あれ?」
 紫水が目を覚ましたのは、ある部屋の一角だった。
 まるで壁に貼り付けられたような姿は、服を剥がされ、いまだ生まれたままの姿だった。
「後遺症はなし、大丈夫?」
「大丈夫じゃ、ない。なにしたの?」
 紫水は目を覚まし、ローブにガスマスク姿の人物に声をかける。手足は動かないので抵抗すらできなかった。

「意識を落とすガスを撒いたの。整備士も同じように眠ってもらってるわ」
 ガスマスクを外すと、そこには赤いウェーブヘアに長い耳、そして緑の瞳をもった女性の姿。
「私はリリ・ヴェルディゴ。お察しの通り焔天魔が雄、カイル様を慕うしがない研究者よ」

 この世界には現状、2つの勢力がある。1つは『OVERS』と呼ばれる外部から来たもの達。そしてもう1つが『焔天魔』。この終焉戦艦「パラダイス」に住まい、永劫とも言える命を享受し、現状を維持する者達だ。
 永劫を破壊する者と、享受するもの。わかりあえることのない両者は散発的な戦いを繰り返し、つい先日もパラダイスを破壊する作戦が決行され、失敗したばかりだ。

「てことは、あなたも……」
「そうよ、紫水 群華。あなたのデータはしっかりと取らせてもらった」
 怪訝そうな顔を向ける紫水にリリは言葉を続ける。
「名前から身長体重パイロットスーツの意匠――そして愛機の秘密も全部ね。パイロットスーツ、こんな感じでしょ?」

 リリが手に持っているスイッチを入れると、一瞬身体に振動が走り、ぴっちりとした感覚が走る。いつも着用している黒に銀のアクセント。そして紫の宝石がついた首もとは、紛れもなくいつも着用しているパイロットスーツ。
「ストーカーにしては質が悪いし同性愛者でもないわ」
「あなたの性癖にも興味はあるけど、狙われる心当たりぐらいは承知でしょ?」
「……スコル・ピクスでしょ」
「ご明察。正確にはスコル・ピクスに内包されているナノマシン。あぁ、もちろん悪いことには使わないわよ。夢があって良いけどねぇ、えぇ」
 自己進化、自己修復、自律行動。そのように口ぶりつつリリはまじまじと紫水を見る。

「外見だけじゃ分からないか、これの出番ね」
 そう言い、リリが取り出したのはガンシリンダー。銃型注射器とも呼ばれるシロモノにはうす赤に着色された液体が揺らめく。
「なにをする気!?」
「まぁまぁ落ち着いて、死にはしないから」
 なだめるように声をかけたリリィは、引き金を引いて薬剤を紫水に打ち込む
「死にはって、う、く……」
 痛くない、しかし液体が流れ込んでくる感覚は奇妙。そして、注射機内の液体を体内に治め、しばらくすると、紫水の身体に身体に妙なかゆみが走り始めた。
「か、かゆい! なにしたの!?」
「うふふ、じたばたする子ってカワイイ……じゃなくて、これでなんとなく分かるかしら?」
 もだえる紫水にリリは上から姿見つきのアームをおろす。するとそこにはナノマシンと融合したときのように、うっすらと銀色に染まっていく紫水の姿があった。

「なに、これ……」
「体内に残留するナノマシンを強制的に活性化させ、増殖させたの。もちろん擬似的なものだから対象者は金属質の物体になっちゃうけど、見る限り中々良いナノマシンのようね」
 スチールを思わせる光沢のある金属、それが手や足、顔を侵食するかのように金属へと変えていく。身体の重さも変わるのかだるさを感じ、かゆみがあった部分は金属になることで消えていく。
「いくら除去しても何十億とある微細なナノマシンを全て落とすのは不可能。体内に10個あればそれで十分。100あればデータも取れるわ」
「まさか」
「ええ、そのまさかよ。可能であればあなたのナノマシン。いいえ、スコル・ピクスそのものが欲しい」
「無理よ、スコル・ピクスは私だけしか操縦――ひゃっ!」
 からかうようにリリが頬に爪をぶつけると、キィンという高い金属音が紫水の身体を響かせる。口も驚いたまま侵食し、口内をほのかに覗かせたまま金属質に変わって動かなくなる。

「(口が動かない、まずい、このままじゃ金属の像に……)」
「色んな人が抵抗してきた。だけど、そろって私に身ぐるみを剥がされて技術を明け渡してきた。そしてついたあだ名は『欲深い蒐集家』。まぁ悪くはないわ。でもそういう下手なこと言うあなたもステキ」
 金属の肌をリリが愛らしく指で撫でる。幸水のほのかな香りが鼻をくすぐったが、すぐに鼻も金属で覆われて、嗅覚が遮断される。

「今日全部奪い取りはしないわ、なにごとも下準備が大事だからね」
「(下準備?)」
「……そう、下準備。あなたにはまだまだ働いてもらわないと」
 目も金属質に変わっていき、視覚は白銀のような色で覆われ、真っ暗な闇に覆われる。ナノマシンとことなり、瞳すら侵食し、無力化したのだろう。
「大丈夫、意識が完全に途絶する前に戻してあげる」

 すでに金属化は最終段階に入り、リリはスチール像となった紫水の周囲を取り囲むようにケーブルを巻き付けていく。金属の擦れ合う音はリリの気分を一層高揚させ、意欲に火を付けた。

「だから今はよい夢を、紫水ちゃん。また逢いましょ?」
 視界の消えた闇の中、リリの声を最後に、紫水の認知から音が消え失せた。
「さて、復元しながら準備しないと。あぁ楽しい楽しい。次がもっと楽しいけどね、うふふふ!」
 金属像となった紫水を見つめるリリは、控えめに言っても非常に興奮していた。
 彼女の凶行は、その後も長く続いた。リリの気が済むまで、スチール像となった紫水の身体は徹底的に調べ上げられることとなった。



 紫水が次に目を覚ましたのは、基地のベッドの上。見慣れた天井が彼女を待っていた。
「今の、夢?」
 五感が戻っている、身体は金属質ですらなく、しっかりと力も入る。
「なにがあったんだろう。思い出せない」
 怪訝そうな顔をするも、一向に思い出せない。ただ、医師の聞く話によれば身体に異常はなく、ただの疲れか、機体のフィードバックが原因ではないかという答えが返ってきた。
「しばらく休暇を取った方が良いでしょう」
「ありがとう。でもライフワークを止めるわけにも行かないからね。無理はしないでおくよ」
『ほら、この通り』と言わんばかりにベッドから飛び起きた紫水は、そのまま医務室から自分の部屋へ足を戻す。
「本当に大丈夫かどうか……ナノマシンが居るから問題ないか」
 医師は頭を掻きつつ張り切る紫水を呆れるように見送った。

 翌日、性懲りもなく紫水は全身をナノマシンで覆った生体CPUとして、無人機の一掃を行っていた。
「今日はなんか調子良いかも。身体がすごく軽いや」
『無茶は禁物よ。この前全然見当違いの場所に止めてて大慌てだったんだから』
「そうだっけ?」
『……なんかボンヤリしてたけど、疲れてたんだよね、そう言ってよ?』


 2日目、この日も大量の無人機がやってきた。有人機もいくらかいたため、撃墜も覚悟していた
「なにか音が聞こえる。でも、このぐらいならね」
『それにしても狙ってくるのが多いね、エネルギーが持たないよ』
「まぁ切れる前に……ステルス機!」
『えっ』
 紫水が素早く尻尾を操作し突き刺す。確かな感覚と共に調べると、先端には串刺しになったステルス機が鉄くずに変わっていた。
『すごい! 今のカンで当てたの?』
「あれ、なんか今見えたような――か、カンだね。カン」
 確かにステルス機特有の偽装電磁波が見えた気がした。したのだが……紫水は言えなかった。

 3日目。無人機が少ない。これまでの攻勢が嘘だったようだ。
「機体が一気に減ったわね。まるで避けてるみたい」
『どっちかというと私らがスイスイ避けてるね。なにかコツでもつかんだの?』
「さぁ……有人敵機4機、脅威度、戦力対象外」
『紫水?』
「あ、あれ。なんか変なこと口走ってた。まぁいいや叩こうっと」
『……』

 4日目。今日は有人機すら出ないので早く切り上げ、コックピットの中でぼんやりしていた。

 そう、なんだかぼんやりすることが多くなった。
 目を閉じてもデータの波が分かる。今日のご飯なににしようか考えたら、栄養価の高いものがすぐに決まるし、敵機の弱点も素早く、かつ最低限の威力で無力化できるようになった。
 論理的になったといえば聞こえはいいが、人間味に欠ける言動も増えた

「ナノマシンのせい……じゃぁないか」
『当たり前じゃない。私だって心配してるんだよ?』
 ナノマシンを注入させることでパイロットを最適化することもできる。だが、そうだったらすでにおかしくなっている。スコル・ピクス、いや、Type-Mtとは長い付き合いだから。
『でも最近おかしな言動が多いよ紫水。軽くメディカルチェックしてもなにもないし、ちゃんと診てもらったら?』
 Mtの言うとおり、やっぱりおかしい。まるで夢か現実か分からない。あの時に見た妙な夢以来……。
「妙な夢、もしかしたらそれさえ分かれば突破口が見つかるかも」
『夢、ねぇ』

 そして、5日目の夜。正確には4日目の深夜というべきか。
 紫水は「夢とはなにか」を考えていた。4日前に見た妙な夢から始まった最近の変化は、日に日に異常さを増していくのを肌で感じている。
「今のこの、妙に頭が切れる状況を駆使すれば、答えもすぐにでるはず……なんだけど」
 しかし、中々思ったように答えがでない。引っかかっているように、どこか答えがでない。
「……」
 目をつむり、いつものように『流れ』に身を任せる。
 響くデータの波は単に五感を示しているわけではない。文字通り大気中に存在する電波や周波数を傍聴し、脳内というデータバンクに構築していく。
 アンドロイドに近い芸当が今の紫水にはできるようになっていた。

 そして、目をつむってしばらくし、眠るようにつむられた瞳が――開いた。

「そうか、そうだったんだ。急がないと」
 紫水はパイロットスーツを急いで身に纏い、格納庫にあるスコル・ピクスに搭乗した。
 整備士は居ない。時間外の出撃も禁じられている。それでも抑えきれない何かによって動かされるように、スコル・ピクスは起動し始めた。

『紫水!? この時間の出撃って禁止されてるよ?』
「そう、このスコル・ピクスのデータ、私も欲しい……」
『なにしてるの! こんなことしたって今さら意味なんてないよ!?』
 ケーブルが巻き付き、肌を銀に染めて生体CPUと化した紫水が逆にスコル・ピクスの保持データに干渉し、コピーを行う。
 ナノマシンがわめくも止めることができない衝動のまま、操縦はもちろん武装制御や軌道制御に至る全てをその身に飲み込む。
「大丈夫、意味のあるものだから」
 会話を遮断してナノマシンに頼らない、自分の動きで操縦する。
 本来ナノマシンと一体となって戦うスコル・ピクスに、確かなひずみが生まれた瞬間だった。

 ハッチがはさみによって切り裂かれ、スコル・ピクスは宙域を駆ける
 向かった座標はデータに登録されていない者。しかし頭の中で発せられるモールス信号を受信した瞬間、罠だろうと座標へ行くことしか考えられなかった。

「対象座標まであと0.1宙域」
 座標の先にあるのは小惑星。砕くか、それとも回避するか。
 いや、内部構造に空洞と人工物が多数見受けられる。ここは――。
『紫水、機体上部!』
「えっ」
 Mtの叫びにカメラを向ける紫水。
 急降下する女性型の機体が、隕石のように強襲をかけ――スコル・ピクスの甲殻を穿った。

 前から2番目の甲殻にアンカーが2本差しこまれ更にブーストを吹かす女性器。
「甲殻破損、敵データは……認証不可?
 シスイが分析している間に脚部がスコル・ピクスと固定し、一体となるように穴を修復していく。
「スコル・ピクス、融合侵食されてるよ! 相手もナノマシン使いだ!」
 紫水は首を振る、まるで全部分かっていたかのような達観に、ナノマシンはなおもわめく。

「ううん、待っていた。待機形態だった。多分、なに、私……」
『紫水落ち着いて。これは――』
 紫水の表情が崩れる、自分のやったことが衝突し合い、困惑する。
「私の願望が成就した。それだけ」
 だが赤い髪の女性が、コックピットになだれ込んできたことで収まっていく。まるでパズルのピースがキレイにハマったかのように、紫水は動きを止めた。
「3日、中々時間がかかったけど、無事に仕上がって良かったわ。初めまして、ナノマシンType-Mtちゃん」
 これからパイロットになる者よ。その言葉にナノマシンがわめき始める。
『あんた、紫水になにをしたの!?』
「そうね……システムチェック、お願いできる?」
『なんであんたの命令に――』
 ナノマシンは反抗した。しかし、生体CPUはスピーカーを通し、リリの現状を告げた。
「上部甲殻に所属不明機接続。全装甲並びにシステムの一部、およびコックピットに重大な侵食が発生しています」
「OK、ナノマシンの優先度を下げて、あと所属不明機は追加パーツってことでお願い。割と作るの苦労したのよ?」
「はい、追加パーツとして認証します」

 まるで言いなりになったかのように情報を告げる紫水。口調もまるで、自分のようで――先ほどコピーした、いや、されたデータが合わされば、この女でも一体になれば機体の操縦も可能だろう。
『だレがあなTaなんかと、え、なニコRE、ノいズが』
 Mtの言語にノイズが入り、意思疎通すら難しい。それ以前に秘されていた情報が全て漏れている。
 紫水に一体なにがあったのかMtは予測もつかない。いつどうしてこうなったのか――。

「パイロットエラー、生体データの再認証をお願いします」
「まぁ、そうなるよね。Eコードを実行してちょうだい」
「了解、Eコード実行。生体CPU『紫水』は分体に移行待機します」
 接続されていたケーブルが解除され、紫水の身体は液体金属のように下半身から急速に融解していく。
『紫水、ダメだ。君までナノマシンになっちゃいけない!』
 抵抗しようにもシステムの優先度が最低にまで落とされ、命令が届かない。Mtの中に紫水が混じり合い、仲違いしていた2人が文字通り1つになっていく。

「Mtちゃん。お仲間が増える前にいいことを教えてあげる」
 リリが口走り始める。
「彼女に仕込んだのは特殊な信号でね。思念信号という肉体・精神に異常を感知しにくい技術なの。あなた達の持ってきた技術の一つよ」
『私が調べテもでNあkaったのは……』
「異常と思わせないように気を使ったからよ。私は拉致した紫水からあなたの残留データを抽出し、それこそコンマゼロが100以上つくようなシロモノを作り上げた」
 紫水が入り込むことで本来感じるシステムエラーがほとんどでないのは、そのためだろう。許容範囲に収まったエラーはMtが自然と補完し、補ってしまう。文字通り1つになっていく。

「そして、記憶から私を削除し、紫水の身体を戻すついでにテストヘッドになってもらった。今の彼女は人間ではない。半機人、人間の肉体を持ちながらナノマシンでもある存在」
『なんテこtヲ……』
「そして、完全なるナノマシンとなったあなた――いや、紫水でありType-Mtであるあなたを私が纏う」
 纏うことでリリがスコル・ピクスの生体CPUとなれば、好きに動かすことができる。
 なおかつ2人分の思考は性能と負荷を格段に上げることとなる。
 紫水が居るべき場所を、リリが奪い取る。それだけでも歯がゆいのに、エラーチェックが止めらない。

「約10秒後に紫水の分体化が完了します。イレギュラーの対処をお願いします」
「ご苦労様、あとはお友達とよろしくね。ついでに優先度も元に戻して」
『紫水、シスイ……』
 紫水の身体は完全に融解し、銀色の海と一帯になる。優先度が戻ったMtがシスイを排除しようとするが、もはや遅かった。今排除すれば、紫水の人格そのものが消え、すなわち自殺につながる。
「もっと喜びなさい。今空が本番なのだから」
 銀の海に女性――リリが続けとばかりに入り込んだ。
 身体に電気が走り、ケーブルが手足を縛り、下半身を丸呑みして身体を固定する。
『させない、絶対にこいつを――』
『ダメ』
 Mtの介入を制止する声。それは紫水だった。
『そしてごめん。私がうかつだった。だけど無理に引き剥がさないで』
『だって、こいつはあなたを』
『データベース上に肉体を再構成することができるデータが残されていた。設備があれば人間になることができるし、対処もできる。それに私があなたを止める』
 止めざるを得ない。Mtあっての紫水であるように、紫水あってのリリなのだから。

「負荷がかかってる……でも、このぐらいなら肉体が持つ!」
 加えて背中から別のケーブルが撃ち込まれ、ナノマシンと融合していく。
 あつらえたぴっちりとしたパイロットスーツは皮膚が銀色に染まると同時に分解され、リリの身体を見る間に侵食していく。
「あぁ、このむしばまれていく感じ。まさに意思を感じるわ!自立思考、自己進化、自己再生。これが……ナノマシン!」

 紫水の、そしてMtの思考がリリの全身に流入し、激しく揺さぶられるようなショックが断続的に襲いかかる。特にMtの感情が思ったよりも影響を及ぼし、狂奔とも言える高ぶりのまま、ケーブルの中で身体を揺らす。

 そしてリリの下半身がケーブルに飲み込まれ、追加のケーブルが身体に馴染むと緑色の瞳がいっそう輝き、システムが正常値に移行する。

 サソリが、新たなネジを得て覚醒する。

『パイロットデータ認証完了。リリ、これでこの機体はあなたのもの』
「お疲れ様。そう、これで……うふふ、アハハハハ!!」
 リリはただ、笑いが止めらなかった。



 その後、スコル・ピクスによく似た機体が紫水の居た宙域に出没し始めた。
 焔天魔の無人機とともに行動していること。そして女性がせり出すよう背中から生えた追加パーツは、異形具合にさらに加速をかけた。
 なにより、人間離れした動きはあらゆる敵を寄せ付けず、賞金も跳ね上がった。
 紫水はMIA、行方不明として扱われ、スコル・ピクスによく似た機体もデータ上、敵の新型機として扱われることとなった。

 彼女の眼前には、多数のデータと共にミニキャラのアバターが2体並んで会話をしている。ヘッドセットなどはない。ナノマシンと融合し、生体CPUとして意思と戦況を統合しナノマシンの最終決定者として治められている証拠だ。

「今何機目かしら?」
『有人機3機、無人機57機撃墜済だよ。連携されてないから大分余裕があるね』
 片方、Mtとついたアバターが口を開く。
「盛況ねMT、心当たりは?」
『元々賞金がかけられていた身だからね。寝返ったと思われている通信も傍受している』
 そしてもう片方はパイロットスーツの少女のアバター、紫水だ。

 リリはスコル・ピクスにオーバーテクノロジーを活用した各種改造を施した。これにより戦力は大幅にアップし、死角がなくなったそうだ。このアバター機能も改造の一種だ。

 そして、紫水の制御のおかげか、リリの予想を遙かに超える速さでもう1つのナノマシン、Type-Mtも順応していた。
 Mtが暴れることによる戦闘中の拒絶反応も覚悟していた。が、紫水のサポートによって完全制御が可能となったスコル・ピクスは操縦・火器管制・回避予測を同時に行う恐るべき機体と化した。

「そうそう紫水。あなたの肉体データはバックアップしてるから、気が向いたら戻してあげる」
『把握している。でも、私は今はナノマシンでも良いと思っている』
「元から生体ユニットとして扱われるのが趣味とか?」
『……否定はしない』
「あらあらぁ」
『だから、気が向いたらね』
「なら、データは破棄しないでおくわ。姿が変わっても愛らしさは変わらないし」
『なんだか照れる――2時の方向に敵影多数。有人機1小隊と推測』


「それじゃぁ、見せてあげましょう。3人分の思考を持ち、近遠前後、あらゆる展開を満たすことができる。恐るべきサソリを」
『了解、リリ・スコルピオ―ネ、戦闘モードに移行します』

 流れ込んでくる思考を制御し、サソリが空を駆ける。
 ナノマシンによって局部硬直し、はじき返されるビーム。伸びる腕、不気味にうごめく尻尾から拡散射出される溶解液――。


 その全てがまさに、異形機。三位一体となった彼女達を倒せる者は、まだ居ない。
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