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襲いかかる色、追い詰められる色(後編)

ペースが上がっているのはいいこと。うん、いいこと。

木を飛び、屋根を飛び、駆け抜けていく人影。きらりを神社から連れ去った零無は細い体躯に見合わぬ速さでサン達のいる学校へと向かっていた。

「もー! 突然なんなの?」
「すまんな、今回はぬしの力が必要だ」
「ぬしの? きらりはきらりだよ」
「……きらりの白の力が必要になる、またとない機会。いや、なければ全滅する」
「えっ」
「今暴れているイロクイは自然に生えてきたものではない。人が捻じ曲げられ、化生に代えられたもの。これをただ追い払っては元に戻せなくなる」
「きらりに戻せるの?」
「ぬしの色が持つ『やり直す力』をもってすれば、な」

零無の言葉に首を傾げつつ、きらりは振り落とされないようしっかりと彼女の肩をつかむ。肉のほとんどない細い体。絹のような肌。血の通った温かさはあるが、うっかりすると折れそうだ。
「ぬ、少し力を入れすぎておるぞ」
「えへへ、零無さんもちゃんと暖かいなって」
「肉はあるからの。ただ、きらりの他にはままに触れられん身だ」
「どうして?」
「……まぁ言ってもいいじゃろ」

零無は行く足を少しゆるめ、口を開いた。
「私の身体は他の色鬼とは大きく異なる。力の影響を特に受けやすく、このように担げるのもぬしぐらい。他のものにうっかりぶつかれば――色が染みこんでしまう。それは私の死につながる。一度捌いて、色を食いやすくしないかぎりはな」

「うーん、なんだかよく分からないけど、気をつけるね」
「そうしてくれ、ほれ見えてきた。投げ飛ばして受け身は取れまい、下ろすぞ」
「うんっ、ありがとう!」


一方、学校では城奈とサンが懸命の時間稼ぎに徹していた。なんとか救援を呼んだものの、時間がかかる以上釘付けにしておかなければ。
だが、なぜ急に現れたのか2人には不思議でならなかった。物体をイロクイに変える橙乱鬼はすでに倒したというのに。

「それにしてもこいつは何者なのね!」
「イロクイはイロクイでも……偲村さんの記憶を持つイロクイ。いや、偲村さんそのものかもです」
「そんなまさか…でも確かにありえなくはないのね」

2人のひそひそ話に砲丸イロクイはしばし立ち止まっていたが、徐々に苛立ってきたのか脚を鳴らしつつ怒りを露わにしていく。
「何をコソコソ話してるノ? 四谷さん」
「あーと、えーと。それより、本当に偲村さんなのね?」
「そうよ!姿は変わったけど私、嫌な男子もほら、あの通り!」

腕を向けた先には、砲丸に囚われた生徒たちの姿。その一部が色を吸われたせいか、鉄の玉から白い玉に変わりつつあった。

「偲村さん、それはマズイことなのね。余計人が離れて行っちゃうの―ね」
「ナンデ?」
「なんでって、それは押さえつけなのね! 力で押し付けて何も言えないようにしてるだけなのは、皆に嫌われちゃうのね!」

その言葉にイロクイの色がかすかに変わる。まるで怒りを帯びたような、赤みを異形の全身に帯びつつあった。
「じゃぁどうしろって?私はアンタみたいに力も何もない、だから強い方になびくのよ! 最初は四谷さん。だけどどんどん離れていったから別の人に映った。わるいこと?違う。それは私のやり方ナノ!」

地雷を踏んだ、城奈は砲丸イロクイ――いや、偲村の言葉からそれを察した。こうなってはもはや止めようがない。
「サン君! アナタは私の味方よね!?」
「な…サン君?」
イロクイと城奈、同時に視線を向けられ、思わず戸惑う。イロクイに与するわけにも行かなければ、城奈だときっぱり言えば、さらに怒らせてしまいかねない。
「ぼ、ボクはどっちも好き…ですよ?」
その煮え切らない態度が、イロクイの怒りをさらに増幅させた。

「サン君、アナタも結局他の男子と一緒よ!!」
腕を振り上げ、叩き潰そうとするイロクイ。しかし、その上でふと止まった。
「(ナンナノ? 怖い!)」
一瞬感じた背後の殺気はすぐに離れていく。そして、代わりに新しい色の塊が――落ちてくる。

「うわわわぁー!?」
「きらりちゃん!?」
階段二段分の高さから落ちた――いや、下ろされたきらりはおしりからグラウンドに着地。そのままお尻をさすりつつ、あたりを見回した。
目に飛び込んできたのは謎の玉が転がる光景。そして、イロクイと相対するサンと城奈の姿だ。

「サン君、城奈ちゃん、いま来たよ!」
脳天気に手を振って合図するきらりに、サンは状況を鑑みる。きらりの落っこちた場所は、ちょうど緑色の玉――健児のすぐ近くだ。
「七瀬さん、そこにある玉を持って逃げてください! できれば他の玉も取って?」
「えっ、これ――なに?」
「これは――ケン君がイロクイにやられた姿です」
手にとった両手大の玉は、サンの言葉に自ら転がって返事をした。


さて、零無がきらりを降ろし、学校から去ろうとした時、体育倉庫から出て行く奇妙な気配を感じた。黒い色のような気配の中に人間の意思。入り混じったそれは、まさに融合体というべき存在だった。

「なるほど、見えておるぞ元凶め。だが厄介だ。非常に厄介だ……」
できれば人間に危害を与えたくないと考える零無は、その場から逃げるように去った。きらりがイロクイを鎮めてくれることを願いつつ。


「アナタ誰? 美味しそうな色してるワネ」
少しずつ体をねじってきらりの方に視線を向けていく砲丸イロクイ。きらりの目もまた、健児、サン、そしてイロクイと向く。
「イロクイさん、どうしてこんなことするの?」
「あんたには関係ないわ、それとも私の力になってくれるの?」
「力…と言うかボールにはなりたくないけど、なんだかものすごく羨ましそうにしていたから、なんとなく?」
「ソウヨ、私はウラヤマシイ! 2人が、友だちに囲まれてるのがウラヤマシイ!」
イロクイの言葉を聞き、きらりも思う節を言葉に返した。

「きらりも、友達居なかったよ。でもいろいろ出歩いて、似た友達とあって、それで1人だけできた。そこから、どんどん増えていったの」
「……? ドウイウこと?」
「ええと、なんだか似てるなって、そう思ったの。やっぱりただのイロクイじゃない。イロクイの皮を被っている」
きらりの言葉に砲丸イロクイの色が浮き出る。薄黒い色を発し、イロクイは焦れた。
「ウルサイウルサイウルサイ! 知ったような、そんな口!」

「城奈、今のうちに」
「OKなのね」
サンはきらりに気を取られているイロクイを見て、作戦を切り替える。自分たちが犠牲者を回収すればいい。きらりであれば多少は抵抗できる色を有している――だからこそ急に切り替えたというべきか。
だが、タイミングが悪かった。固められた集団に駆け足で向かっていたその時、イロクイの長い足が行く手を遮る。

「その友達の色を全部吸い取ってヤル。そして私は、強くなる! 見返してやる、強いモノを落として!」
イロクイの両手が城奈を挟み込もうと、腕を勢い良く半球の腕に叩きこもうと動かす。
「危ない!」
サンは城奈をかばおうと腕を引っ張る。しかし、サンの向かう先にあったのは、もう一方の腕。2人は思わず身を伏せ、そのまま手の中に取り込まれた。

「アハハハ! 見てなさい。2人をモノ言わぬ砲丸にして、強くなるの、アハハ!!」
イロクイは閉じ込めた2人を丸め込むように手を高速回転させ、丸め込んでいく。中から悲鳴のようなくぐもった声が聞こえるが、すぐに消えてなくなり、砲丸が風を切って高速回転する音と、イロクイの狂ったような笑い声だけが響いた。

「もうぐちゃぐちゃになった頃かしら?美味しそうな色を抜き出してジュルジュル吸いだすの。ウフフ、たまらない……」
両手の間から、ごぼっ、ごぽ、と音を立てて絵の具のような液体が流れだす。濃赤、ブラッドオレンジとも言える色の濁流が溜めきれずに溢れだし、地面に消えていく。慢心とも見せつけとも言えるイロクイの態度は、きらりに攻撃を行なわせるスキを与えていた。
攻撃なんてするはずがない。そう考えたが故の慢心。だが……。
「うぅ、ごめんなさい!」

イロクイはきょとんとした顔で腕の回転を緩める。その顔に、白い色が顔に位置する砲丸を白く染めた。
きらりは元から止めなければいけないと思っていた。だからこそ、攻撃せざるを得なかった。イロクイの意思に反して。

「う、そ。ナン、で」
「確かに、友達になれそうだよ。だけど、サン君も城奈ちゃんも友達。だから――止めるの」
「ア、ァ……」

砲丸イロクイの身体がバラバラに崩れ、ただの砲丸になっていく。その一つ、白く塗りつぶされた砲丸が姿を変え、少女の姿に戻る。偲村利恵本人だ。


「ようやく元に戻ったのね」
「なんだか身体がふらふらする……」
サンと城奈が元に戻ったのは、紫亜達が色渕ガ丘の学校にやってきた時だった。他の生徒が砲丸イロクイの消滅で姿が戻っていたものの、混ぜられた2人はどちらとも付かぬ、混ざり合った色をした砲丸に磨き上げられていた。

こればかりは戻すのに手間がかかった。神社に持ち帰った後、零無が処置したおかげで治ったものの、それまでは混ざり合った砲丸として抱えられていたのだからなんとも居心地が悪い。
「いいじゃん、四谷と一つになれたんだろ?あんなことやこんなこととかなぁ、考えてたんだろ?」
「そういうのは無いのね!」
健児のからかいに苦笑いするサンだが、やはり気がかりなことは多く残っている。
特に利恵については健児が保健室に連れて行ったものの、イロクイだった記憶が残っていなかった。しつこく問い詰めて保健室から追い出されてしまったためまともな話が聞けなかったのだろうが、ひとがイロクイに変わる、その手がかりを失ってしまった。

「それでね、きらりが色をバーって出すとイロクイが止まってね」
「うん、うん」
きらりもイロクイを倒したことを紫亜や翠、そして零無に伝える。零無は満足そうだが、翠にするとなんとも複雑な気分だ。
「(なんできらりじゃないとダメだったのだろう)」
なんでもきらりの色だから戻せるとは言うものの、零無に対して不信を抱く翠には信じがたい。ともあれ暴れまわるイロクイが落ち着いたからいいのだが……。

「ともかく、しばらくは見張りとかをしっかり行いましょう。きらりも、あんただけが今のところ戻せる切り札みたいなものなんだから」
「大丈夫だよ真畔ちゃん。大丈夫大丈夫」
「やれやれ、こんな脳天気でいいものかのう」

かくして日が暮れ、今日の会合はドタバタのうちにお開きとなった。
できれば現れてほしくないものだが、それを知る者は――今、部屋の中にいた。

「ある程度色は確保できたものの、こんなもんじゃ足りないわ。もっと色を集めないと」
やはり素体が悪かったのだろう。美奈子の顔は不機嫌そのものだ。親に食事を持ってこさせ、食べつつ次の計画を練る。

そこには赤ペンで『最終目標 四谷城奈を奴れいにする』と殴りかかれていたが、さらにそこに『みんなどれいにする』と書かれていた。
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